AI・SNS副業講座のトラブルが増加|「広告と実際が違う」高額スクールに注意

「AIを使えば短期間で稼げる」「未経験からSNS運用を仕事にできる」――。

SNSを見ていると、このような広告が頻繁に表示されます。

興味を引く言葉や受講者の成功事例が並び、「無料説明会だけなら」と思わせる広告も少なくありません。
もちろんAIやSNS運用を学ぶこと自体には価値がありますし、すべてのスクールや講座に問題があるわけではありません。

一方で、広告から受けた印象と実際の講座内容が異なる、高額な契約をその場で勧められる、契約後に厳しい解約条件を知るといったトラブルが増えています。

国民生活センターは2026年9月16日、AI講座やSNS運用講座などの「ビジネス講座」に関する相談が増加しているとして、注意を呼びかけました。

今回はどのような流れで契約に至るのか、広告と実際にはどのような違いが生じているのかを、国民生活センターの相談事例やインターネット上の公開投稿から見ていきます。

この問題を「怪しい広告に気を付けよう」という消費者側の注意だけで終わらせることはできません。

AI・副業・リスキリングという成長市場で、集客や販売の仕組みが、教材の更新や受講支援よりも先に拡大していないか。広告やサービスを設計する事業者側の課題についても考えます。

目次

AI・SNS運用などのビジネス講座に関する相談が過去最多に

国民生活センターの公表資料によると、ビジネス講座に関する相談件数は、2024年度の2,682件から2025年度には3,551件へ増加し、過去最多となりました。

2026年度も7月31日までに1,121件が寄せられています。

特に目立つのが、SNS広告をきっかけに事業者とつながり、Web会議で勧誘を受けて高額な契約を結ぶケースです。

相談内容は単に「思ったほど役に立たなかった」というものだけではありません。

・広告や勧誘時の説明と、実際の講座内容が大きく異なっていた

・講座の勧誘があると知らされないまま、Web会議に参加した

・月額料金だと思っていたが、実際は長期契約だった

・「すぐに元が取れる」と説明され、高額なクレジット契約を組んだ

・契約後に、厳しい解約条件や返金条件を知った

広告、説明会、個別相談、契約という一連の流れの中で、少しずつ当初の話が変わっていくケースが見られます。

SNS広告から高額契約に至るまで

今回紹介されている相談には、共通する流れがあります。

  1. SNSで「AI副業」「在宅ワーク」「SNS運用」などの広告を見る
  2. 無料説明会や低価格の教材に申し込む
  3. LINEなどのメッセージアプリへ誘導される
  4. Web会議で現在の仕事や収入、悩みを聞かれる
  5. 悩みを解決する手段として上位講座を提案される
  6. 「今日だけの特典」「すぐに回収できる」などと契約を促される
  7. クレジットカードや分割払いで数十万~100万円を超える契約を結ぶ

入口では、無料説明会や数千円から1万円程度の教材が案内されていても、その後に高額なプランを提案されることがあります。

国民生活センターには、1万円の情報商材を購入した後、Web会議で約80万円のAI動画講座を勧められた事例が寄せられています。
勧誘時には「講座代は1、2カ月ですぐに取り戻せる」と説明されましたが、受講者は動画を見ても収益につながる内容とは思えず、36回払いの支払いも困難になったと相談しています。

無料や低価格の商品は、必ずしもそれ自体が問題なのではありません。
ただし、それが高額契約へつなげるための入口になっていないかは注意して見る必要があります。

「広告と実際が違う」とは、具体的に何が違うのか

国民生活センターは、「期待したような内容ではなかった」「支払った金額に見合う内容ではないと感じた」といった相談が多数見られるとしています。

しかし、これだけでは実際に何が違ったのか、少し分かりにくいかもしれません。
公開されている相談投稿を見ると、その違いは大きく4つに整理できます。

1.「最新のAI」を学べるはずが、教材が古い

2025年1月のYahoo!知恵袋には、AIを使ったSNS運用スクールについての相談が投稿されています。

投稿者によると、契約前には「最新AIの使い方を学べる」「AIを活用した効率的なSNS運用」「3カ月でSNS運用のプロになれる」などと説明されていました。

ところが受講を始めると、教材が古く、記載内容と現在のツールの仕様が一致しない部分があったといいます。

さらに、メンターが教材内容を十分に把握していない、メンター自身も教材を改善した方がよいと話している、AIを使わない運用方法を提案されたなど、営業時の説明との違いを挙げています。

この投稿だけで個別の事実関係を判断することはできませんが、「最新のAI」を掲げる講座ならではの問題が表れています。

AIサービスは更新が速く、数カ月前の教材でも画面や機能が変わることがあります。教材の最終更新日や、仕様変更にどのように対応しているかは重要な確認項目です。

参考:Yahoo!知恵袋の公開投稿

2.実務スキルを学べるはずが、操作方法は自主学習

2024年11月には「Webデザイン、ホームページ制作、SNS運用代行、AIを活用した収益化」を学べるとして、約70万円の伴走支援プランを契約したという相談が投稿されています。

投稿者はフリーランスとして生計を立てられる水準までWeb制作やSNS運用を具体的に教えてもらえると考えていました。しかし実際は、物事の考え方や言語化などの「メタスキル」に関する講義が中心だったとしています。

制作課題ではCanvaやSTUDIOを使ってWebサイトを模写するよう求められたものの、ツールの操作方法に関する説明はなく、提出物へのフィードバックも簡単な内容にとどまったと述べています。

自ら調べて実践する姿勢は、WebやAIの仕事では欠かせません。ただし、「実務スキルを個別に教えてもらえる」と受講者が認識していた一方、実際は自主学習が中心だったのであれば、契約前の説明が十分だったのかという問題が残ります。

参考:Yahoo!知恵袋の公開投稿

3.「24時間サポート」のはずが、質問に回答がない

2025年10月の投稿では、6カ月で37万円のWeb系スクールについて、契約前に「専属コーチが24時間質問に答える」「スクールから案件が提供され、実績を作れる」と説明されたとしています。

ところが、実際には質問への返答がないことがあり、「案件提供」もコーチがクラウドソーシングサイトで探した仕事で、希望していた分野とは異なる事務系案件だったと述べています。

このケースでは、動画教材だけでなく、コーチングや案件提供も商品の重要な一部です。「質問し放題」と「すぐに回答が得られる」は同じではありません。また、「案件紹介」が、スクール独自の仕事を提供することなのか、一般の求人やクラウドソーシング案件を案内することなのかでも意味が変わります。

参考:Yahoo!知恵袋の公開投稿

4.「返金保証」があっても、実際には条件が厳しい

「稼げなければ返金」「成果が出なければ全額返金」という言葉は、契約への不安を小さくします。
しかし、返金には細かな条件が設定されている場合があります。

例えばすべての面談への参加、一定以上の動画視聴率、課題の提出、指定された営業活動の実施、期限内の申請などです。一つでも条件を満たさなければ、返金の対象外になる可能性があります。

国民生活センターには、「解約できる」とだけ説明されて約20万円の副業スクールを契約したものの、後から受け取った利用規約に、解約可能な期間の制限や、動画をほぼ最後まで視聴していることなどの条件が書かれていたという相談も寄せられています。

「返金保証があるか」だけでなく、「どのような条件を満たせば返金されるのか」を契約前に書面で確認する必要があります。

説明との違いは、講座内容だけではない

今回の相談を整理すると、「広告と実際の違い」は次の4種類に分けられます。

確認する部分説明と実際に生じている違い
教材最新・実践的と説明されたが、古い、基礎的、抽象的だった
指導体制個別指導・伴走支援と説明されたが、動画視聴と自主学習が中心だった
収益化支援案件を紹介すると説明されたが、仕事が提供されない、希望と異なる案件だった
契約条件月額制や返金保証を強調されたが、実際は長期契約や厳しい解約条件だった

特に注意したいのが、広告で示される成果と、実際に提供されるサービスが別のものであるケースです。

「月5万円稼げる」「未経験から3カ月で仕事にできる」という言葉は将来の成果を示していますが、契約によって購入するのは、あくまで動画、面談、教材、コミュニティなどのサービスです。

そのサービスを受ければ同じ成果が得られるとは限りません。成功事例が紹介されていても、受講者全体のうち何人が達成したのか、どのくらいの期間や作業量が必要だったのかが示されていなければ、再現性を判断することは困難です。

WorXUPの視点:集客の速さに、提供品質が追いついていない

今回の相談増加の背景には、副業やリスキリングへの関心に加え、生成AIの急速な普及があります。
新しいツールが登場するたびに「今から学ばなければ遅れる」という焦りが生まれ、事業者にとっても広告を出しやすい市場になっています。

一方で、教育サービスの品質を保つには時間と人手がかかります。
教材を最新の内容へ更新し、実務経験のある講師を確保し、受講者ごとの質問や添削に対応し、紹介できる案件を用意する。受講者が増えれば、こうした提供体制も同じ速度で拡張しなければなりません。

しかし、SNS広告や説明会の仕組みは、教材や支援体制よりも短期間で拡大できます。
広告表現を改善し、LINE登録やWeb説明会への導線を整え、営業担当者を増やせば、契約件数は伸ばせます。
その結果、「売る仕組み」は完成しているのに、契約後の体験が追いついていないという状態が生まれます。

すべての事業者が意図的に消費者を欺いているとは限りません。
それでも、広告で約束する成果、営業担当者の説明、実際の教材、講師の対応、案件支援が別々に管理されていれば、その間にずれは生じます。
事業の成長スピードに対して、提供品質と説明内容を点検する仕組みが不足していることも、この問題の一つの構造だとWorXUPは考えます。

こうした事案は注意喚起だけでなく、行政処分や逮捕に至った例もある

AIやSNS運用を掲げる講座を巡っては、実際に行政処分が行われた例もあります。

2025年12月、関東経済産業局は、SNS運用やAI活用ビジネスを教えるオンラインスクール事業者に対し、特定商取引法違反で行政処分を行いました。

公表された事例では、SNS上の無料コンサルティングからWeb会議などを通じて勧誘し、月収約5万円で高額契約の経験がない18歳の消費者に消費者金融からの借入れと分割払いを勧め、総額約77万円の契約を締結させたとされています。
処分内容は、法令順守体制の整備や再発防止を求める「指示」であり、業務停止命令ではありません。

また2026年6月には、SNS上でインフルエンサーになりすまし、副業講座などの情報商材を宣伝して代金をだまし取った疑いで、大阪の会社代表ら男女41人が詐欺容疑で逮捕されたと報じられました。
捜査では、約2,300人、総額6億円を超える被害の可能性があるとみられています。

こちらは逮捕段階の報道であり、有罪が確定したことを意味するものではありません。
ただ、SNS上の発信者への信頼を入口として、高額な副業講座へ誘導する仕組みが、刑事事件にまで発展した例として注意が必要です。

ダークパターンと共通する「考える時間を減らす」設計

WorXUPでは別のコラムで、利用者を意図しない選択へ誘導する「ダークパターン」を取り上げています。

今回の高額講座の販売方法は、Webサイト上のボタンや解約画面といった典型的なダークパターンそのものとは限りません。しかし、利用者が比較し、考え、断るための余地を小さくする点では共通しています。

  • 無料診断や無料説明会で参加への心理的なハードルを下げる
  • 個別面談で収入や仕事への不安を詳しく聞き出す
  • 一部の成功事例を示し、自分にも再現できるように感じさせる
  • 総額よりも「月々いくら」という負担の小さな数字を強調する
  • 「今日だけ」「残りわずか」と期限を設け、比較する時間を減らす
  • Web会議の場で決済まで進め、第三者へ相談する機会を持ちにくくする

問題は説明のひとつひとつが直ちに違法かどうかだけではありません。

複数の働きかけが連続することで、冷静な状態なら選ばなかった高額契約をその場で選びやすくなることです。

AIによって広告文、動画、利用者ごとの訴求を大量かつ短時間で作れるようになれば、こうした誘導も効率化できます。だからこそ事業者には、広告を作る技術だけでなく、消費者の判断を不当に狭めていないかを管理する視点が必要です。

事業者側に必要なのは、CVを取る設計と「誤解を残さない設計」

広告運用ではクリック率や登録率、説明会から契約へ至るコンバージョン率が重視されます。

しかし、高額な教育サービスでは、契約件数だけを最適化すると、説明と期待のずれが大きい人まで顧客にしてしまいます。

短期的に成約率が上がっても、解約、返金、クレーム、行政相談が増えれば、事業者の信用や採用、広告出稿にも影響します。
悪質な販売が市場に広がれば、誠実に運営する事業者まで疑われ、業界全体の顧客獲得コストを押し上げかねません。

事業者が広告や説明会で明確にすべきなのは、少なくとも次のような情報なのではないでしょうか。

広告・説明で使う表現契約前に明示すべき情報
「最新のAIを学べる」教材の制作・更新時期、使用ツール、仕様変更時の更新方針
「24時間サポート」受付時間と回答時間の違い、回答者、返信の目安、対応範囲
「案件を紹介」独自案件の提供か、求人情報の案内か、応募・選考条件、報酬の目安
「未経験から収益化」実績の母数、達成者の割合、集計期間、必要な作業時間や前提条件
「返金保証」対象期間、申請方法、課題提出など適用に必要な全条件
「月々○円から」手数料を含む総支払額、契約期間、分割回数、中途解約条件

広告表現を弱くすることが目的ではありません。

広告で抱かせる期待と、契約後に提供できる価値をそろえることが重要です。

サンプル教材を見せ、条件を先に開示し、持ち帰って比較できる時間を設ける。
そうして納得した人が契約するほうが、継続率や紹介、長期的なブランドへの信頼にもつながります。

WorXUPは、「売れる広告」と「納得して選べる情報設計」は対立するものではないと考えます。

むしろ、何を提供でき、何は保証できないのかを明確にすることが、AI・リスキリング市場を一過性のブームで終わらせないための条件です。。

最後に:成長市場だからこそ、売り方が信頼を左右する

AIやSNS運用には新しい仕事につながる可能性があり、実践的な知識を提供している講座もあります。

高額だからすべて問題があるとも安価なら安心とも限りません。

問題は具体的な講座内容よりも、「短期間で稼げる」「未経験でも人生を変えられる」といった将来の成果ばかりが強調され、その場で高額な契約を判断させられることです。

そして、それを消費者個人の判断力だけに委ねることにも限界があります。

事業者側には、広告、営業、教材、サポートを別々に最適化するのではなく、広告で伝えた価値を契約後まで一貫して届ける責任があります。

比較する時間を奪うのではなく、判断に必要な情報を先に示す。
成果を印象だけで語るのではなく、その条件や限界も説明する。
そうした売り方こそが、市場の信頼をつくります。

「何を学べるのか」だけでなく、「何が契約書に書かれているのか」まで確認すること。

そして事業者は、「どこまで強く訴求できるか」だけでなく、「受講者が誤解なく選べるか」を問うこと。消費者と事業者の双方にその視点があってこそ、AI・SNS時代の学びは健全な市場として育っていくのではないでしょうか。

参考資料

※Yahoo!知恵袋の投稿は、投稿者本人による申告であり、個別の事実関係が確認されたものではありません。本記事では、国民生活センターが指摘する問題を具体的に理解するための参考例として紹介しています。

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