SNSではひとりのユーザーが複数のアカウントを使い分けることが一般的になっています。
日常を投稿する本垢、親しい人だけとつながるサブ垢、勉強の記録を残す勉強垢、美容情報を集める美容垢、そして趣味や推し活に特化したホビ垢。
なかでも最近注目されているのが趣味専用のSNSアカウントである「ホビ垢」です。
ホビ垢は単に趣味の写真や感想を投稿するためのアカウントではありません。
自分の好きなものを表現し同じ関心を持つ人とつながり趣味を軸にした世界観を作っていく場所として機能しています。
今回はホビ垢とは何か、なぜ広がっているのか、そして企業やビジネスパーソンはこの動きをどう捉えるべきなのかを整理していきます。
ホビ垢とは何か
ホビ垢とはHobby Account、つまり趣味用アカウントを意味する言葉です。
XやInstagram、TikTokなどのSNS上で、趣味に関する投稿をするために作られる専用アカウントを指します。
例えばアニメ、ゲーム、アイドル、キャラクターグッズ、ファッション、カフェ巡り、ハンドメイド、写真、音楽、映画、スポーツ観戦など、特定の趣味や関心ごとに合わせてアカウントが作られます。
本垢では学校や職場、友人関係など現実のつながりを意識した投稿が中心になります。
一方でホビ垢では自分の好きなものを自由に投稿し、同じ趣味を持つ人とつながることができます。
つまりホビ垢は現実の人間関係とは少し距離を置きながら、自分の趣味を深く楽しむためのSNS上の居場所とも言えます。
アカウントの使い分けを簡単に整理すると、次のようになります。
| アカウント種別 | 主な用途 | 投稿内容の傾向 |
|---|---|---|
| 本垢 | 友人・知人とのつながり | 日常、学校、仕事、近況 |
| サブ垢 | 限定的な交流や本音の投稿 | 内輪ネタ、気軽な投稿、感情の共有 |
| ホビ垢 | 趣味や推し活の発信 | グッズ、作品感想、イベント、カフェ、ファッション |
このように見ると、ホビ垢は単なる別アカウントではなく、目的や見せ方が明確に分かれたSNS上の表現空間だと考えられます。
なぜホビ垢が広がっているのか
ホビ垢が広がっている背景にはSNSにおける「見せる相手」の多様化があります。
本垢ではリアルな友人、学校の知人、職場関係者、家族など、さまざまな人とつながっているケースがあります。
そのため自分の趣味をすべてオープンに投稿することに抵抗を感じる人も少なくありません。
好きなものを投稿したい。
でも、現実の知り合いには見られたくない。
同じ趣味の人とはつながりたい。
でも、本垢の空気感とは分けたい。
こうした感覚の受け皿として、ホビ垢が使われています。
特に推し活やオタ活のように、趣味そのものが日々の行動や消費と結びついている領域では、ホビ垢の存在感が大きくなります。
グッズを買う。
イベントに行く。
コラボカフェに行く。
写真を撮る。
SNSに投稿する。
同じ趣味の人と交流する。
この一連の流れが、ひとつの文化として定着しつつあります。
つまりホビ垢は、趣味を記録する場所であると同時に、趣味を通じて誰かとつながるための場所でもあるのです。
ホビ垢は「趣味」ではなく「世界観」のアカウントになっている
ホビ垢の特徴は趣味の情報を投稿するだけではない点にあります。
多くのホビ垢では投稿の雰囲気や写真の撮り方、色味、プロフィール文、絵文字、言葉づかいまで含めて、ひとつの世界観が作られています。
例えば推しのグッズをカフェのテーブルに並べて撮影する。
お気に入りのキャラクターを背景や小物と一緒に投稿する。
特定の色味で写真を統一する。
ファッションや雑貨と趣味を組み合わせて見せる。
このような投稿は単なる記録ではなく「自分はこの世界観が好き」という表現でもあります。
SNSでは何が好きかだけでなく、どう見せるかも大きなポイントのひとつとなっています。
ホビ垢はその人の趣味や価値観を視覚的に表現する”場所”になっているのです。
企業目線で見るとこれは非常に興味深い動きです。
かつてSNS上の口コミは商品を買った感想やサービスの評価が中心でした。
しかし現在は商品やサービスがユーザーの世界観の一部として投稿されるケースが増えています。
商品そのものが評価されるだけではなく、写真に撮りたくなるか、投稿したくなるか、自分のアカウントの雰囲気に合うかが基準になってきているともいえます。
ホビ垢に多いジャンル
| ジャンル | ホビ垢での投稿例 |
|---|---|
| 推し活垢 | アイドル、俳優、声優、K-POPなど |
| アニメ・漫画垢 | 作品感想、グッズ、イベント参加 |
| キャラクター垢 | サンリオ、ちいかわ、ディズニーなど |
| カフェ巡り垢 | 推しグッズとカフェ写真 |
| トレカ・グッズ垢 | トレカケース、アクスタ、ぬい撮り |
| ファッション垢 | 参戦服、双子コーデ、推しカラーコーデ |
| ハンドメイド垢 | 推し活グッズ、デコケース制作 |
| ゲーム垢 | プレイ記録、スクショ、フレンド交流 |
| 写真・ぬい撮り垢 | ぬいぐるみやアクスタの撮影 |
| イベント参加垢 | ライブ、舞台、コラボカフェ、展示会 |
ホビ垢でよく見られる投稿スタイル
| 投稿スタイル | 内容 |
|---|---|
| 推しグッズ×カフェ写真 | アクスタ、トレカ、ぬいをカフェで撮影 |
| 首下フォト | 顔を出さず服装や持ち物で世界観を表現 |
| 推しカラーコーデ | 推しのメンバーカラーに合わせた服装 |
| 参戦服投稿 | ライブ・イベント前後のコーデ投稿 |
| トレカデコ投稿 | 硬質ケースやステッカーで装飾 |
| ぬい撮り | ぬいぐるみを外出先で撮影 |
| コラボカフェ記録 | メニュー、特典、グッズを投稿 |
| 購入品紹介 | グッズ、アパレル、アクセサリー紹介 |
| 世界観統一投稿 | 色味・加工・絵文字を揃えた投稿 |
| 同担・界隈交流投稿 | 同じ趣味のユーザーとのつながり作り |
ホビ垢から見える消費行動の変化
ホビ垢の広がりからは消費行動の変化も見えてきます。
ユーザーは商品やサービスを単体で消費しているのではなく投稿できる体験として消費している場合があります。
カフェに行く理由も「飲み物を飲むため」だけではありません。
推しのグッズと一緒に写真を撮るため、アカウントの世界観に合う場所を探すため、同じ趣味の人に共有するために訪れることがあります。
イベントや店舗、商品も同じです。
その場で楽しむだけでなくSNSに投稿するところまで含めて体験になっています。
このような消費行動では次のような流れが生まれます。
| 行動 | 内容 |
|---|---|
| 発見 | 同じ趣味の人の投稿から商品や場所を知る |
| 来店・購入 | 自分も体験したい、撮影したいと思う |
| 撮影 | グッズや空間、商品を自分なりに見せる |
| 投稿 | ホビ垢で共有し、反応を得る |
| 拡散 | 同じ界隈のユーザーに情報が広がる |
この流れを見るとホビ垢は単なる投稿用アカウントではなく、趣味を軸にした情報流通の場になっていることがわかります。
企業にとっては広告を出して認知を取るだけではなく、ユーザーが自然に投稿したくなる体験を設計できるかどうかが重要になります。
企業はホビ垢をどう捉えるべきか
企業がホビ垢を考える際に注意したいのは、単に「若者に流行っているから活用する」という見方では不十分だという点です。
ホビ垢のユーザーは自分の趣味や世界観を大切にしています。
そのため企業側の一方的な宣伝や界隈の空気感を理解していない発信はかえって違和感を持たれる可能性があります。
重要なのはホビ垢のユーザーが投稿したくなる余白を作ることです。
写真に撮りたくなる商品パッケージ、推しグッズと一緒に撮影しやすい空間、同じ趣味の人と共有したくなるイベント、投稿時に使いやすいハッシュタグなどが考えられます。
企業側が考えるべきポイントを整理すると、次のようになります。
| 視点 | 考えるべきこと |
|---|---|
| 商品 | 写真に撮りたくなる要素があるか |
| 体験 | SNSに投稿したくなる場面があるか |
| 空間 | 趣味や推し活と組み合わせやすいか |
| 言葉 | 界隈の空気感とズレていないか |
| 導線 | 投稿や共有がしやすい設計になっているか |
| コミュニティ | ユーザー同士がつながる余地があるか |
ホビ垢を狙いにいくというよりホビ垢に自然に取り上げられる文脈を作る。
この視点がこれからのSNSマーケティングでは重要になるかもしれません。
ホビ垢から考えるこれからのSNSマーケティング
これまでSNSアカウントは個人を表すものとして考えられてきました。
しかし現在はひとりのユーザーが目的ごとにアカウントを使い分けています。
本垢、サブ垢、推し垢、勉強垢、美容垢、ホビ垢など、アカウントごとに投稿内容やつながる相手が異なります。
これは、SNS上の自分がひとつではなくなっていることを意味します。
仕事や学校の自分。
友人といる自分。
趣味を楽しむ自分。
推しを応援する自分。
情報収集をする自分。
それぞれの自分に合わせて、SNS上の場所も分かれているのです。
企業にとってもこの変化は無視できません。
単に年代や性別でターゲットを捉えるだけではなく、ユーザーがどのような関心ごとの中で商品やサービスに接触しているのかを見る必要があります。
同じユーザーでも本垢で見る情報とホビ垢で見る情報では受け取り方が変わります。
本垢では興味を持たれない情報でもホビ垢の文脈では自然に受け入れられることがあります。
SNSマーケティングでは誰に届けるかだけでなくどのアカウントの文脈で届けるかも重要になっていくのではないでしょうか。
最後に
ホビ垢は単なる趣味専用アカウントではありません。
自分の好きなものを表現し同じ関心を持つ人とつながり趣味を軸にした消費や体験を共有する場所になっています。
企業やビジネスパーソンにとってもホビ垢の広がりはSNS上でユーザーがどのように情報を受け取り、商品やサービスを投稿し、コミュニティの中で共有しているのかを考えるきっかけになります。
これからのSNSマーケティングでは、単に投稿数やフォロワー数を見るだけではなく、その投稿がどのような趣味や世界観の中で生まれているのかを捉えることが重要です。

