2026年6月4日、Apple社よりApp Storeを通じた経済圏が2025年に過去最高規模へ拡大したことが発表されました。
リリースによるとApp Storeエコシステムを通じたデベロッパーの売上および販売実績は1.4兆ドル以上、日本円で約220兆円規模に達したとされています。
参照:https://www.apple.com/jp/newsroom/2026/06/app-store-ecosystem-reaches-1-point-4-trillion-usd-as-developers-thrive-globally/
実際にユーザーとしてAppStoreを利用することがあっても、実はビジネスとしてはあまり接点が無いビジネスパーソンも多いのではないかと思います。
WorXUP運営メンバーはこれまで多くの国内アプリマーケティングにも携わらせていただきましたが、アプリの仕組みやマーケティングはまた独特の領域となっており、通常のいわゆる”WEB施策”とは少し異なる部分があります。
今回はこのニュースとともにアプリ領域の話題について触れていければと思います。
成長を牽引するアプリはAIが“標準機能”
まず今回の発表で特に注目したいのが、”消費者向けAIを搭載したアプリの売上が4倍の成長を記録した”とのことです。
AppleによるとApp Storeの売上上位100アプリのうち40以上が消費者向けAI機能を搭載しており、AI対応アプリが高い成長率を示したとされています。
これはAIが一部の専門ツールや開発者向けサービスにとどまらず、一般ユーザーが日常的に使うアプリの中へ組み込まれ始めていることを意味します。
写真編集、文章作成、健康管理、学習、業務効率化、顧客対応、予約管理など、AIはすでに単体の機能ではなく、アプリ体験そのものを変える要素になっています。
「上位100アプリのうち40以上」の具体的な40アプリ名までは公表されていませんが、AI機能を搭載し一般ユーザーにも利用されている代表的なアプリ例としては下記のとおりです。
| 分野 | アプリ名 | App Store掲載 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 文章作成・検索 | ChatGPT | あり | OpenAI公式アプリ。文章作成、相談、画像生成、音声会話などに対応。(App Store) |
| AI検索 | Perplexity | あり | AI検索・出典付き回答・深掘りリサーチに対応。(App Store) |
| デザイン・画像編集 | Canva | あり | AIを活用したビジュアル制作ツールとしてApp Storeに掲載。(App Store) |
| 画像・動画制作 | Adobe Express | あり | 画像・動画・SNS投稿作成に加え、生成AI編集機能も掲載。(App Store) |
| 学習 | Duolingo | あり | 語学学習アプリ。Appleの紹介ページでもAIと言語科学を組み合わせたレッスンに言及。(App Store) |
| 業務効率化 | Notion | あり | App Store上で「Notes, Tasks, AI」として掲載。AI搭載ワークスペースとして説明されています。(App Store) |
こう見ると、普段から良く使っている、またビジネスでも欠かせないアプリ(ツール)が多いことがわかります。
また、AppStore経済圏の内訳としては下記となっています。
| 区分 | 金額 | 構成比 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| デジタル商品・サービス | 1,490億ドル | 約10% | ゲーム、企業向けアプリ、動画配信アプリなど |
| 物理商品・サービス | 1兆1,370億ドル | 約79% | 小売、旅行、フードデリバリー、食料品、配車、デジタル決済など |
| アプリ内広告 | 1,510億ドル | 約10% | iOSアプリ内に表示される広告収益 |
| 合計 | 1兆4,370億ドル | 100% | App Storeエコシステム全体 |
App Store経済圏の1.437兆ドルの内訳を見ると、ゲームや動画配信などのデジタル商品・サービスは約10%にとどまり、約79%は小売、旅行、フードデリバリー、食料品、配車などの物理商品・サービスが占めています。
つまりApp Storeはアプリやサービスを販売しているプラットフォームの枠組みから、生活者の購買・予約・移動・決済を支える巨大な商取引基盤といえると思います。
物理商品・サービスの中身について、さらに以下のように分かれています。
| 物理商品・サービスの内訳 | 金額 | 全体に占める割合 | 例 |
|---|---|---|---|
| 一般小売 | 6,730億ドル | 47% | EC・ショッピングアプリなど |
| 旅行 | 1,650億ドル | 12% | ホテル予約、航空券、旅行予約など |
| フードデリバリー・ピックアップ | 1,200億ドル | 8% | 食事の注文、テイクアウト予約など |
| 食料品 | 980億ドル | 7% | ネットスーパー、食料品配送など |
| 配車 | 640億ドル | 4% | タクシー・ライドシェアなど |
| デジタル決済 | 160億ドル | 1% | アプリ経由の決済関連取引など |
注意点として、これはAppleの売上そのものではありません。
Appleが「App Storeエコシステムを通じて促進した」とする取引規模であり、Amazonアプリでの購入、Uberの配車、旅行予約、アプリ内広告なども含む広い概念となります。
220兆円市場の裏側にある、アプリマーケティングとSDK計測
上記のとおり、今回のApp Store経済圏の規模はAppleの売上だけを示したものではありません。
Appleのデータに加え、アプリ分析会社、市場調査会社、個別企業データ、モバイル広告プラットフォームの分析データなどを組み合わせ、アプリを通じて発生した購買、予約、広告収益などを推計したものとされています。
参照:Apple / Analysis Group “Apple’s Global App Store Ecosystem and Its Growth, 2025”
では、これはどういうことでしょうか?
冒頭でもお伝えしたアプリの仕組みやマーケティングはまた独特の領域となっており、通常のいわゆる”WEB施策”とは少し異なる部分がある点についてを交えてお話していきます。
アプリマーケティングに必要なSDKとは?
ここで押さえておきたいのが、アプリ計測に欠かせない「SDK」という存在です。
今回のAppleからの発表では、「SDK」という言葉が直接使われているわけではありません。
しかし、アプリ分析会社やモバイル広告プラットフォームのデータが活用されている点を踏まえると、アプリ市場のデータを理解するうえで、SDKを含むアプリ計測の仕組みは避けて通れないテーマです。
SDKとは、「Software Development Kit」の略で、日本語では「ソフトウェア開発キット」と呼ばれます。
少しわかりやすく言えば、アプリの中に組み込む“計測や機能追加のための部品”のようなものです。
Webサイトであれば、Google Analyticsや広告タグを設置することで、どのページが見られたのか、どの広告から流入したのか、どのボタンがクリックされたのかを計測できます。
一方で、スマートフォンアプリの場合は、Webサイトのようにタグを貼るだけでは同じような計測ができない場面があります。
そこで、アプリの中にSDKを組み込み、インストール、起動、会員登録、購入、課金、継続利用、離脱といったユーザー行動を計測できるようにします。
ここがいわゆる「WEB」と「アプリ」の大きな違いの一つでもあります。
| Web施策 | アプリ施策 |
|---|---|
| Google Analyticsや広告タグで計測 | SDKをアプリ内に組み込んで計測 |
| ページ閲覧、クリック、フォーム送信などを把握 | インストール、起動、会員登録、購入、課金、継続利用などを把握 |
| ブラウザ上の行動が中心 | アプリ内の行動や広告経由の成果が中心 |
| CV計測・広告改善に活用 | アプリ広告、UI改善、プッシュ通知、LTV分析などに活用 |
例えばアプリマーケティングにおいて仮に広告配信をおこなった際、企業が知りたいのは「広告が何回表示されたか」だけではありません。
その広告を見たユーザーが実際にアプリをインストールしたのかはもちろんのこと、初回起動したのか、会員登録まで進んだのか、商品購入や課金につながったのか、さらにその後も使い続けているのか。こうした一連の流れを把握することが重要になります。
こうした計測やデータを支える仕組みがSDKとなるのです。
これまでご説明のとおり、「SDK」を活用することでユーザーの課金、継続利用状況なども把握ができるため、これらをアプリ分析会社、市場調査会社、個別企業データ、モバイル広告プラットフォームの分析データなどのデータと組み合わせることで、アプリを通じて発生した購買、予約、広告収益の推計にも関与しているということは想像に難しくありません。
SDK|国内主要サービス
繰り返しとなりますが、SDKとはアプリの中に組み込むための「計測用の部品」や「仕組み」を指します。
そのSDKを国内で提供している主なサービスが下記となります。
| サービス名 | 読み方 | 主な役割 | できること | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| AppsFlyer | アップスフライヤー | アプリ広告の効果測定・アトリビューション | どの広告媒体からインストールされたか、インストール後に課金・購入・登録したかなどを計測 | 複数広告媒体を使ってアプリ獲得を強化したい企業 |
| Adjust | アジャスト | アプリ広告の効果測定・不正対策・アトリビューション | 広告経由のインストール、アプリ内イベント、キャンペーン成果、広告不正などを計測 | 広告費の最適化や不正インストール対策を重視する企業 |
| Firebase | ファイヤーベース | Google提供のアプリ開発・分析基盤 | アプリ内イベント、ユーザー行動、継続率、クラッシュ、通知、認証などを管理 | アプリ開発から分析・改善まで一体で行いたい企業 |
代表的なSDK(アプリ計測ツール)には、AppsFlyer、Adjust、Firebaseなどがあります。
AppsFlyerやAdjustは、主に広告経由のインストールやアプリ内課金、会員登録などを測定するMMP(※)として使われることが多く、広告費の最適化に役立ちます。
※MMPとは「Mobile Measurement Partner」の略で、アプリ広告の成果を計測し、どの広告媒体がインストールや課金、継続利用につながったかを可視化するためのベンダーなどの事です。
一方、FirebaseはGoogleが提供するアプリ開発・分析基盤で、アプリ内イベントやユーザー行動、継続率などを把握するために活用されます。

アプリ市場全体や競合分析|アプリ市場分析ツール
アプリマーケティングではSDKように自社アプリの成果を計測する仕組みだけでなく、市場や競合を外部から把握するための分析ツールも活用されます。
代表的なものとして、アプリのダウンロード数や売上推定、ランキング、レビュー、広告出稿状況、ストア内キーワードなどを分析できる下記のようなサービスがあります。
| サービス名 | 読み方 | 主な役割 | 特徴・用途 |
|---|---|---|---|
| Sensor Tower | センサータワー | アプリ市場分析・競合調査 | アプリのダウンロード数、売上推定、ランキング、広告出稿状況などを把握できる代表的ツール。2024年にdata.aiを買収。(Sensor Tower) |
| Appfigures | アップフィギュアズ | アプリ分析・ASO・レビュー分析 | アプリデータを一元管理し、ダウンロード、収益、キーワード、レビューなどを分析できるツール。(Appfigures) |
| Similarweb App Intelligence | シミラーウェブ | アプリ・Web横断の市場分析 | アプリだけでなくWebも含めて、デジタル上の競合分析や利用動向を見たい場合に使いやすいツールです。(Similarweb) |
このようなアプリ市場分析ツールは、自社アプリの内部データを見るためのものではなく、市場全体や競合アプリの動向を外部から把握するために使われます。
例えば競合アプリのダウンロード数や売上規模はどの程度か、ランキングはどう推移しているのか、どのような広告クリエイティブを出しているのか、といった情報を確認することができます。
SDKが「自社アプリの中で何が起きているか」を見る仕組みだとすれば、
Sensor Towerなどのアプリ市場分析ツールは「市場や競合で何が起きているか」を見るためのツールです。
アプリマーケティングでは、この内側と外側の両方を見ながら獲得・継続・収益化の戦略を設計していくことが重要になります。

最後に
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回はApp Storeの話題から、少しアプリマーケティングの話にも展開しました。
色々な角度で背景や裏側に目を向け、少しでもビジネスのヒントやチャンスになれば幸いです。
今後もアプリマーケティングのテーマや【検証シリーズ】など、ニーズに合わせて深堀りしていく記事をアップしていければと思います。

